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木藪日記
第89回
二兎を追う者は一兎をも得ず

依頼者: 妻(37歳)
対象者: 夫(メーカーの総務部長:43歳)
イラスト
対象者は、これまで2度の浮気がバレていた。
「3度目の正直。これで離婚します」と対象者の妻が浮気調査を依頼してきた。
結婚10年目、9歳になる娘が1人いる。
「3ヶ月ほど前から、出張の回数が突然増えました。事務職なのにおかしいでしょう?」
次の出張予定は、来週の火曜から木曜。
尾行することに決めた。
火曜の朝、スーツ姿の対象者は東京駅へ。
向かった先は博多である。
京都駅付近で、依頼者から電話が入った。
「夫の会社に聞いたら、『今日から3日間、休暇を取っている』って言われたんです。」
博多駅で夫を待ち受けていたのは、中洲のクラブホステス(25)。
10人が10人、振り返るほどの長身の美女。
夫が以前、本当に出張した際に知り合ったようだ。
夫は、女のマンションで3日間過ごしている。
単なる客とホステスの関係でもないらしい。
しかし、夜は決まって同伴出勤。
それなりの金を使っていることも確かだ。
女に貢ぐために、わざわざ博多まで会いに出かける。
その事実が、妻を完全にキレさせた。
「サイテ〜!!!の男」妻はそう吐き捨てた。
バカ高い慰謝料を払う羽目になった対象者は「彼女に会いに行く金がなくなった」とため息。
私もフォローのしようがない。
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