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木藪日記
第87回
独立の果て

依頼者: 独立開業したAさん(34歳)
対象者: Bさん(31歳)
イラスト
あるソフトメーカーでやり手の営業課長だったという人物が、今回の依頼者Aさん。
当時、後輩だったBクンを引き連れて独立してから半年が過ぎたという。
かわいがっていたBクンに「一緒に働かせてほしい」と懇願されたからである。
「そのBクンが『父親が倒れて実家に戻らなければならない。辞めたい』と言いだしたんです。
事情が事情だけに了承したのですが、彼が辞めた途端に、7割以上の顧客から取引を打ち切られた。
何かあるとしか思えないんです」
平日の5日間、Bクンを尾行し、ある中年男性と頻繁に接触していることが分かった。
その中年男性の顔写真をAさんに見せたところ、「以前いた会社の役員です」。
数日後、Bクンはその会社に復帰した。
それもAさんのポストだった営業課長として舞い戻っている。
もちろん、顧客をかっさらって、だ。Bクンは、独立するAさんの元に送り込まれた会社側のスパイだったのです。
彼を信じたAさんが、寝首をかかれたというわけ。
Aさんは唇をかみながら、黙って調査項目に耳を傾けていた。
Aさんの会社は資金繰りがショートし、あえなく倒産。
甘いと言われればそれまでだが・・・・・。
Aさんは、地方の実家に戻ったと聞いている。
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