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木藪日記
第31回
タコ部屋

依頼調査: 行方調査
対象者: 父(59)
イラスト
<概要>
乳飲み子を抱えた26歳の主婦が「家出した父(59)を捜してほしい」と事務所を訪ねて来た。
原因は数千万円に上る借金。5年前の夕方、事業に失敗した父親から「さ、債権者が家に押しかけて来る。と、とにかく逃げろ!」という電話があり、そのまま行方知れずになったという。父親は“ヤミ金融”にも手を出していたらしい。
この調査は、手がかりをつかめず苦労した。詳しくは話せないが、約半年かけて、ある建設現場の“タコ部屋”に軟禁され、借金返済のために作業員として無理やり働かされていることが分かった。
問題はどうやって本人に接触するかだ。建設現場に不法侵入するわけにもいかない。そこで建設会社の素性を調べ上げたところ、意外な事実が発覚した。私が警視庁刑事だったころに逮捕したことがある男が、その建設会社の社長だったのだ。
社長に直談判し、父親の存在を確認できた。
数日後、依頼者から「父と電話で話すことができました。残り300万円の借金をすべて返済できたら、家に帰してもらえるそうです」との連絡が入った。
こうした建設現場には、依頼者の父親と似た境遇の男性が山ほどいる。これはドラマの話ではない。解決したのはたまたまだ。
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